毎日の食卓で大活躍してくれる天然木のせいろ。野菜が驚くほど甘くなったり、お肉がふっくらジューシーに仕上がったりと、一度使うと手放せなくなる魅力があります。
わが家でも夫や小学生の娘と一緒に蒸したての温野菜を囲む時間が日課になっています。
ですが、使い始めるときに誰もが一度はぶつかる大きな壁があります。
「使ったあとは普通のお皿みたいに食器用洗剤で洗っていいの?」
「たわしでゴシゴシこすっても傷まない?」
「気がついたら黒いカビが生えていたらどうしよう……」
といったお手入れへの不安です。
天然素材でできている調理器具だからこそ、間違った洗い方や乾かし方を続けてしまうと、嫌な臭いが染みついたり、カビの原因になったりすることがあります。
日々のちょっとしたコツさえ覚えてしまえば、せいろのケアはフライパンやお鍋を洗うよりもずっと手軽でシンプルです。
使った後に汚れを溜め込まず、必要な部分を水とブラシですっきり整え、風通しのよい場所でしっかり乾かすこと。
この基本サイクルを無理なく続けるためのポイントや、万が一カビが生えてしまったときの対処法まで分かりやすくお伝えします。
- せいろを傷めない基本の洗い方と洗剤を使ってはいけない理由
- 油汚れや黒ずみを防ぐ調理時の工夫とおすすめのお手入れ道具
- カビの発生を根本から防ぐ正しい干し方と湿気を避ける保管場所
- 万が一カビや変色が起きてしまったときの安全な落とし方とリセット手順
せいろの正しい洗い方の基本
せいろを手に入れたら、まず最初に覚えておきたいのが毎日の洗い方です。
一般的な陶器のお皿やステンレス鍋とは扱い方が少し異なりますが、手順そのものはとてもシンプルなので安心してください。
洗剤を使わない理由と水洗いの基本
せいろのお手入れにおいて、最も大切な鉄則は「普段のお手入れで食器用洗剤を使わないこと」です。
普段の洗い物と同じ感覚で台所用洗剤をスポンジにつけて泡立てたくなるかもしれませんが、それは絶対に避けましょう。
杉や竹、ヒノキといった天然木には目に見えない無数の導管や微細な隙間が存在しています。いわば木肌全体が呼吸しているような状態です。
ここに界面活性剤を含む洗剤をつけてしまうと、泡や香料が木の繊維の奥深くまでぐんぐんと染み込んでしまいます。
一度染み込んでしまった洗剤成分は、どれだけ流水ですすいでも完全には抜けきりません。
その状態で次回せいろを蒸し器にセットして火にかけると、熱蒸気と一緒に染み込んだ洗剤の香料や成分が立ち上り、大切な食材にケミカルな臭いが移ってしまう原因になります。
天然木のせいろに合成洗剤を使うと、木肌が洗剤を吸い込んでしまい、料理の風味を損なうだけでなく木自体の油分を奪って割れや変形の引き金にもなります。
基本は「洗剤なしの水洗い、またはぬるま湯洗い」を徹底してください。
基本の洗い方は、調理直後のまだ本体が温かいうちに、蛇口からの流水を当てながら手早く洗い流すだけで十分です。
汚れの程度が軽ければ、手のひらで木肌を優しくなで洗いするだけでもすっきりと仕上がります。
たわしを使った汚れの落とし方
蒸し料理で少し食材がくっついてしまったり、すのこの隙間に汚れが入り込んだりしたときは、道具の力を借りましょう。ここで大活躍するのが「たわし」です。
ただし、フライパンの焦げ付きを落とすような硬い金属たわしや、研磨剤入りのナイロンたわしを使ってはいけません。
繊細な木の繊維を傷つけて毛羽立たせてしまい、そこから水分が侵入してかえって傷みやすくなってしまいます。
おすすめなのは、パームヤシやシュロなどの天然素材で作られた、適度にコシのあるせいろ用たわしです。
柔らかすぎず硬すぎない天然毛のブラシを使うと、木の表面を傷つけることなく隙間の汚れだけをしっかり掻き出せます。
洗うときの動かし方にもちょっとしたコツがあります。木の繊維の流れをよく観察して、木目に沿って優しくブラッシングしてください。
繊維に逆らって直角にゴシゴシこすってしまうと、木の表面がけば立ってささくれの原因になるため注意が必要です。
特に蒸し布を使わずに肉まんやお芋を直接置いたときは、すのこの段差部分にデンプン質が残りやすくなります。
その部分だけ毛先を潜り込ませるようにして、流水を当てながらリズミカルに汚れを落としましょう。
油汚れがついた時のぬるま湯ケア
豚肉の薄切りや鶏肉の蒸し料理、点心などを調理したあとは、どうしてもせいろのすのこや側面に脂分がついてしまう場面があります。
「油がついたのに洗剤を使わなくて本当に落ちるの?」と不安になりますよね。
お肉の脂はおおむね40度から50度程度のぬるま湯を当てることで、自然と緩んで浮き上がってきます。
熱湯をいきなりかけてしまうと食材のタンパク質が木肌の上で熱凝固してこびりついてしまう恐れがあるため、お風呂より少し温かい程度のぬるま湯を使うのがベストです。
ぬるま湯を流しながらたわしでサッと油分を洗い流し、そのあと綺麗なふきんで水分と一緒に浮いた油分を吸い取るように拭き取ってください。これだけでも日常的な油汚れの大部分は綺麗に落ちてくれます。
軽い油膜が木肌に残っていたとしても、木製品にとっては自然な油分コーティングとして働く側面もあります。神経質に脱脂しようとして強い洗剤を使う必要はまったくありません。
野菜を蒸しただけの簡単なお手入れ
キャベツやブロッコリー、かぼちゃやサツマイモなど、油分のないお野菜だけを蒸した日は、水洗いすら省略できるケースが多々あります。
野菜から出た水分はほぼ純粋な蒸気とわずかなアクだけです。すのこに野菜のくずが残っていない状態であれば、固く絞った清潔な濡れ布巾で全体をさっと拭き上げるだけでお手入れは完了します。
水につける回数が少なければ少ないほど、木が余計な水分を吸い込まないため、乾燥にかかる時間も短くなりカビのリスクを減らせるというメリットがあります。
汚れの状態を見極めて「今日は拭くだけにしておこう」と引き算のお手入れができるようになると、せいろのハードルはぐっと下がります。
カビを防ぐ乾かし方と干し方のコツ
せいろの寿命を左右する最大の要素は、実は「洗い方」よりも「乾かし方」にあります。
カビは水分と適度な温度、そして養分が揃った場所で一気に繁殖するため、使った後の湿気をいかに早く飛ばすかが勝負の分かれ目になります。
使った後の水気を素早く拭き取る手順
洗い終わったせいろを、ビショビショに濡れたまま水切りカゴに放置していませんか。洗い終わったら、1秒でも早く表面の水気を取り除くことが乾燥への第一歩です。
吸水性の高い乾いたキッチンクロスや清潔なタオルを用意し、せいろの内側、外側、そして竹や木が交差しているフチの溝まで、両手で挟み込むようにして水分を吸い取らせましょう。
木肌を擦るのではなく、タオルを押し当てて水分を移しとるイメージで行います。
厚手のマイクロファイバークロスやリネン素材のキッチンタオルを使うと、表面の水分が一瞬で布側に移動するため、乾燥時間を大幅に短縮できます。
風通しのよい日陰で干す重要な理由
表面の水分を拭き取ったあとは、空気の動きがある場所でしっかりと自然乾燥させます。ここで絶対に守ってほしいルールが「直射日光を避け、風通しのよい日陰で干すこと」です。
お日様の光に当てて天日干ししたほうが、紫外線で殺菌できてカビも防げそうな気がするかもしれません。
ですが、強い直射日光に天然木を当てると、急激な乾燥によって木材の内部と表面で収縮スピードの差が生じ、パキッと大きな亀裂が入ったり、全体が大きく歪んで蓋が閉まらなくなったりします。
木製の工芸品や調理器具にとって急激な温度変化と乾燥は大敵です。
室内であればキッチンの窓際や、エアコンの風が緩やかに通るリビングの棚の上など、直射日光が当たらない明るい日陰を選んで風を当ててください。
パーツを重ねず立てて乾かす配置
乾かすときの並べ方にも重要なポイントがあります。
せいろの身(本体)と蓋を重ねたまま置いてしまうと、重なり合った接触部分にいつまでも湿気が留まり、そこから数日でカビの胞子が芽を出してしまいます。
乾かすときは必ず蓋と本体をバラバラに分解し、接地面が少なくなるように立てて配置しましょう。
お皿を立てて乾かすディッシュスタンドを活用したり、壁に少し斜めに立てかけたりして、空気の通り道を全方位に確保するのが理想的です。
| 置き方 | 乾燥の効率 | メリット・注意点 |
|---|---|---|
| 重ねて平置き | 極めて低い | 接触面に湿気がこもり、最もカビが発生しやすいNG配置 |
| 単体で平置き | 普通 | 底面のすのこ裏側に風が当たりにくいため乾燥に時間がかかる |
| 斜めに立てかける | 高い | 省スペースで風が表裏両面に通りやすく、日常の乾燥に最適 |
| スタンドで完全直立 | 極めて高い | 全方位から空気が触れるため最速で乾き、変形も防げる理想形 |
完全に乾くまでの時間の目安
「手で触ってサラッとしているからもう乾いたかな?」と判断してすぐにしまってしまうのは非常に危険です。
天然木は表面が乾いていても、木材の芯の部分にはまだたっぷり水分を含んでいることがよくあります。
一般的な室内環境であれば、最低でも丸一昼夜(24時間)、梅雨時や湿度の高い夏場であれば2日(48時間)ほど乾かし続けるのが安心の目安です。
特にすのこの編み込み部分や留め具の周辺は乾きにくいため、十分すぎるほど時間をかけて乾燥させましょう。
せいろの適切な保管方法と収納場所
しっかり乾燥させたせいろをどこにしまうかも、長く愛用するためには見逃せない要素です。
日本の住宅環境、特にキッチン周りは湿気がこもりやすいため、保管場所の選び方には少しコツがいります。
密封容器やビニール袋がダメな理由
「ホコリがつかないように綺麗に保管したい」という思いから、ジッパー付きの保存袋や大きなビニール袋、密閉式のプラスチックケースに入れて収納しようとする方がいらっしゃいます。
ですが、これはせいろにとって最も過酷な環境です。
完全に乾かしたつもりでも、木製品は周囲の湿度変化に合わせて湿気を吸ったり吐いたりしています。
ビニール袋のような通気性ゼロの空間に閉じ込めてしまうと、木から吐き出された微細な水分が袋の中に充満し、まるで温室のような多湿状態を作り出してしまいます。
その結果、数週間後に袋から出してみたら緑や白のカビで覆われていた、という悲しい事故が起きてしまうのです。保管するときは絶対に密閉せず、常に外気と触れ合える状態を保ちましょう。
吊るす収納や見せる収納のメリット
せいろの保管場所として最もおすすめしたいのが、「しまい込まない収納」です。
キッチンの壁面やレンジフードのフックに麻紐やS字フックを使って吊るしておくスタイルは、見た目におしゃれなだけでなく機能面でも非常に理にかなっています。
常にキッチンの気流に触れているため湿気がこもる隙がなく、使いたいときに手を伸ばせばワンアクションで取り出せます。毎日のお料理に自然と出番が増えるのも大きなメリットです。
棚に置く場合でも、扉のついた密閉キャビネットの奥底ではなく、オープンシェルフの上段や食器棚の天板の上など、視界に入る開放的なスペースを選んでみてください。
竹や木の温もりある質感は、キッチンのインテリアとしても素敵なアクセントになってくれます。
湿気のこもりやすいシンク下を避ける
キッチンの収納スペースとして真っ先に思い浮かぶシンク下やコンロ下の開き戸ですが、ここへの収納はできる限り避けてください。
シンク下には排水パイプが通っており、水を使うたびに湿度が上がりやすい構造になっています。
加えて、日常的に扉が閉じられているため空気の循環がほとんど起きません。カビの胞子にとっては、まさに繁殖にうってつけの暗所多湿ゾーンなのです。
どうしてもキッチンの戸棚や引き出しに収納しなければならない場合は、扉を定期的に開けて換気するか、除湿剤を一緒に置き、通気性のある不織布バッグなどに入れて保管する工夫を施してください。
カビや黒ずみが出たときの落とし方
「気をつけていたのにうっかりカビが生えてしまった」「すのこの端が黒ずんできた気がする」という場合でも、すぐに諦めて処分してしまう必要はありません。
初期の段階であれば、安全な材料を使って綺麗にリカバリーできます。
白カビを見つけた時の初期対応
せいろの表面にフワフワとした綿毛のような白い斑点がついているのを見かけたら、それは「白カビ」です。
白カビは木の表面に付着している段階であることが多いため、比較的落としやすいタイプと言えます。
見つけたらまず、周囲に胞子が飛び散らないよう屋外や風通しのよい場所へ移動させ、乾いた布や使い古しの歯ブラシで優しくカビの胞子を払い落とします。
そのあと、薬局などで手に入る消毒用エタノール(アルコール度数70〜80%程度)をキッチンペーパーにたっぷり含ませ、カビの生えていた部分とその周辺をしっかりと拭き取ってください。
アルコールは揮発性が高く、カビの菌を死滅させたあとに素早く蒸発してくれるため、木肌に水分を残しにくいという優れた特性があります。
拭き取りが終わったら、風通しのよい日陰で丸一日しっかり乾燥させましょう。
黒カビや深い黒ずみの対処法
白カビを放置してしまったり、湿った状態が長く続いたりすると、木の繊維深くまで菌糸が根を張る「黒カビ」に変化してしまいます。
また、食材のアクや木のタンニンが反応して起きる黒ずみも厄介な問題です。
こうした頑固な黒ずみには、食品添加物グレードの「重曹」や「お酢」を使ったつけ置き洗いや擦り洗いが役立ちます。
ただし、塩素系漂白剤(ハイターなど)を使うのは絶対にNGです。強力な塩素成分が木肌に浸透して抜けなくなり、人体に有害な成分が蒸気に混ざってしまう危険性があります。
重曹を少量の水で練ってペースト状にし、黒ずみが気になる部分に塗布して10分ほど置いたあと、たわしで繊維に沿って磨いてみてください。
酸性の黒ずみ汚れであれば、薄めた食酢(お酢1に対して水3程度)を含ませた布で拭き取るのも効果的です。
黒カビの菌糸が木の奥深くまで達して色素沈着を起こしている場合、完全に元の白い木肌に戻すのは難しいこともあります。
ですが、アルコール殺菌や熱湯蒸しで菌そのものを死滅させてしまえば、衛生的には問題なく使い続けることができます。
お湯で空蒸しする煮沸・殺菌消毒
カビを取り除いたあとや、長期間使っていなくて衛生面が少し気になるときは、せいろ自身を蒸気で殺菌する「空蒸し(からむし)」を行いましょう。
やり方はとても簡単です。鍋にたっぷりのお湯を沸かし、何も食材を入れない状態のせいろをセットして蓋をし、強火の蒸気で15分から20分ほどしっかりと蒸し上げます。
100度の熱蒸気がせいろ全体を満遍なく包み込むことで、熱に弱いカビ菌や雑菌を熱気で一掃できます。
空蒸しが終わった直後はせいろ自体が高温になっているため、鍋から外して風通しのよい場所に立てておけば、余熱の力で水分が急速に蒸発していきます。
清潔な状態を取り戻すための定期的なメンテナンスとしても非常におすすめの方法です。
せいろを汚さない使い方の工夫
お手入れの手間を根本から減らす一番の近道は、そもそも「せいろを極力汚さないように使うこと」です。ちょっとした下準備を取り入れるだけで、食後の洗い物が驚くほど楽になります。
クッキングシートや蒸し布の活用法
食材をすのこに直接置くのではなく、一枚クッションを挟むだけで汚れの付着を劇的に防ぐことができます。中でも最も手軽で使い勝手がよいのが「クッキングシート(オーブンペーパー)」です。
せいろの底面のサイズに合わせてシートを丸く切り、蒸気が通り抜けるようにフォークやハサミでポツポツと小さな穴をいくつか開けて敷きます。
最近では最初から穴が開いた市販のせいろ専用シートも販売されており、敷くだけで蒸気の通りを邪魔せずに油やタレをしっかり受け止めてくれます。
また、昔ながらの綿100%で作られた蒸し布も非常に優秀です。布全体が余分な水滴を吸収してくれるため、肉まんやおこわの底面がベチャつかず、ふっくらと美味しく仕上がります。
使用後は蒸し布だけを普通に水洗いすればよいため、せいろ本体は綺麗な状態をキープできます。
キャベツや白菜など葉野菜を敷く技
専用のシートや布がないときでも、冷蔵庫にあるお野菜を敷き紙代わりに活用する素晴らしい裏技があります。
キャベツや白菜、レタスの外葉などをすのこ一面に敷き詰め、その上にシュウマイやお肉を並べて蒸し上げる方法です。
野菜の葉が肉汁やタレをしっかりキャッチしてくれるため、せいろの底が汚れるのを防いでくれます。
さらに嬉しいことに、お肉の旨味をたっぷり吸い込んだ敷き野菜そのものが、とても美味しい一品のおかずとしてそのまま食べられます。
ゴミも出ず、洗い物も減り、野菜も美味しく食べられるという一石三鳥の知恵です。わが家でも豚バラ肉を蒸すときは、必ずざく切りキャベツを敷き詰めてから調理しています。
耐熱皿や小鉢をそのまま中に入れる方法
タレ漬けにしたお肉や魚の煮付け、麻婆豆腐のように水分や脂分が多い料理を作りたいときは、せいろの中に「耐熱皿」をそのまま入れて蒸すのが正解です。
せいろの直径より一回り小さいサイズの耐熱陶器や深皿に食材を盛り付け、お皿ごとすのこの上にセットして蒸気を通します。
こうすれば油汚れや調味料が木肌に触れる心配はゼロになり、せいろ本体は綺麗な蒸気を受け止めるだけですみます。
調理が終わったら、お皿だけを取り出して食卓に並べ、洗うのもそのお皿だけで完了します。
せいろ自体は蒸気を浴びてしっとりしているだけなので、水気をサッと拭き取って日陰に干すだけで片付けが終わります。
素材ごとの特徴とお手入れの違い
ひと口にせいろと言っても、使われている天然木の種類によって水への強さや扱いやすさに違いがあります。
ご自身が使っているせいろの素材を知っておくと、より適したお手入れができるようになります。
杉・竹・ヒノキの耐久性と乾きやすさ
家庭用として広く親しまれている代表的な素材が「杉」「竹」「ヒノキ」の3種類です。
それぞれの特性を理解しておくと、日々のお手入れの加減が掴みやすくなります。
| 素材 | 主な特徴と香り | 水への耐性と乾きやすさ | お手入れの難易度 |
|---|---|---|---|
| 杉(スギ) | 価格が手頃で軽く、特有の清々しい木の香りが食材にふんわり移る | 吸水性が高く乾きは早いが、繊維が柔らかいため丁寧な扱いが必要 | 入門向け。乾燥不足に注意すれば扱いやすい |
| 竹(タケ) | 繊維が非常に強靭で傷がつきにくく、中華せいろの底すのこに多用される | 水切れが非常によくカビに比較的強いが、編み込みの隙間に汚れが溜まりやすい | 初心者向け。たわしで隙間をしっかり洗うのがコツ |
| 檜(ヒノキ) | 最高級の木材で耐久性が抜群。上品な芳香と重厚感のある美しい佇まい | 天然の精油成分により抗菌・防カビ性に極めて優れ、長く使える | 中〜上級向け。乾燥時の急激な温度変化によるひび割れに注意 |
杉はお手頃で扱いやすい反面、木肌が柔らかいのでたわしで力を入れすぎないように注意が必要です。
竹は水切れが抜群ですが編み目に汚れが残りやすいためブラシ洗いが肝心になります。
ヒノキは木自体に抗菌性があり丈夫ですが、高価なため急激な乾燥によるひび割れを防ぐ丁寧な保管が求められます。
使い始めのアク抜きと準備の儀式
新しくせいろを購入したときに、いきなり食材を入れて使い始めてはいけません。
新品のせいろには木の粉や、天然木ならではの渋み・アクが含まれているため、使い始めに「空蒸し(アク抜き)」を行う必要があります。
せいろ全体をさっと水で濡らしてから、たっぷりお湯を沸かした鍋にセットし、15分ほど空蒸しをしてください。
この工程を踏むことで、余分な木のアクが抜け、木肌に適度な水分が行き渡って今後の割れや縮みを防ぐ準備が整います。
蒸し終わったあとは、お茶の出涸らしや野菜くず(キャベツの芯など)を入れてもう一度5分ほど蒸すと、新品特有の強い木肌の匂いが和らぎ、お料理の風味を邪魔しなくなります。
せいろを長く愛用するための注意点
日々の扱いの中で、何気なくやってしまいがちなNG行動がいくつかあります。
せいろを10年、20年と長く育てていくために、避けるべきポイントを確認しておきましょう。
食洗機や食器乾燥機を避ける理由
現代のキッチンで欠かせない食器洗い乾燥機ですが、せいろを投入するのは絶対に厳禁です。
食洗機は高温のお湯を高圧で噴射し、アルカリ性の強い専用洗剤で洗い上げたあと、熱風で一気に乾燥させるシステムです。この一連の過酷な環境は、天然木にとって致命的なダメージとなります。
強い洗剤成分が木肌に染み込み、熱風乾燥によって木材の水分が一瞬で奪われることで、歪み、ひび割れ、留め具の破損、接着面の剥がれなど、取り返しのつかない破損を引き起こします。
どれだけ忙しい日であっても、せいろだけは手洗いと自然乾燥を徹底してください。
使う前に本体を水で濡らす重要性
洗うときだけでなく、実は「使う直前」の準備にも大切なルールがあります。乾いた状態のせいろをそのまま熱い鍋の上にセットして蒸し始めていませんか。
せいろを火にかける前には、必ず全体を流水にサッと潜らせて湿らせる「水濡らし」を行いましょう。
あらかじめ木肌に水分を含ませておくことで、食材の油分やタレ、色素が木の内部に染み込むのを防ぐバリアの役割を果たしてくれます。
さらに、木があらかじめ潤っていることで、蒸し器のフチに当たって焦げてしまうのを防ぐ効果もあります。
水で濡らしたあとは軽く水滴を振り落とし、それから食材をセットして鍋に乗せる習慣をつけてみてください。
せいろのお手入れに関するよくある質問(FAQ)
Q1. うっかり食器用洗剤で洗ってしまった場合はどうすればいいですか?
A. 一度洗剤を使ってしまった場合は、まず流水を当てながらたわしで木肌を念入りにすすぎ、表面の洗剤成分をできる限り洗い流してください。その後、たっぷりのお湯を沸かした鍋で20〜30分ほど長めに「空蒸し」を行います。蒸気と一緒に木の中に染み込んだ洗剤成分を外へ追い出すイメージです。蒸し上がったら完全に乾かし、料理を入れる前に一度お湯だけで蒸して嫌な匂いが残っていないか確かめてみてください。
Q2. 毎回お湯で洗う必要がありますか?水洗いだけでは不十分でしょうか?
A. 普段のお手入れは冷たい水洗いだけで全く問題ありません。むしろ、お肉や魚を蒸した直後に熱湯をかけると、タンパク質が熱で固まって木肌にこびりついてしまうことがあります。普段は常温の水、またはお肉の脂が気になるときだけ40度前後のぬるま湯を使う、という使い分けが木を傷めない一番の方法です。
Q3. 冬場や梅雨時期に早く乾かす良い方法はありますか?
A. 扇風機やサーキュレーターの風を当ててあげるのが非常に効果的です。直射日光やドライヤーの温風は木を急激に乾燥させて割れの原因になりますが、常温の風を当てる分には木を痛めません。風の通り道を作って空気を動かしてあげるだけで、梅雨時でも乾燥スピードが格段に早くなります。
Q4. せいろの留め具の桜皮や針金が緩んできた時はどう手入れすべきですか?
A. 天然素材のせいろは、乾燥すると木が縮んで留め具が少し緩んだように感じることがあります。これは木が生きている証拠で、蒸気で湿気を含むと再び木が膨張して自然と締まる場合が多いです。もし完全に外れてしまったり針金が飛び出したりした場合は、怪我を防ぐためにペンチで内側に押し込むか、メーカーの修理・巻き直し相談を利用するのが安心です。
Q5. 長期間使わないときはどのように保管すればカビませんか?
A. 最低でも2日以上かけて芯まで完全に乾かしたあと、新聞紙や通気性のよい不織布でふんわりと包んで保管してください。新聞紙は適度に湿気を吸い取ってくれるため、天然木の保存にとても適しています。その上で、押し入れの奥ではなく、風通しのある部屋の高い棚の上など、湿気が溜まりにくい場所を選んで置いてあげましょう。通気性のよい収納用品を活用するのも賢い選択です。
せいろの洗い方と手入れのまとめ
せいろのお手入れは、一度慣れてしまえば食器用洗剤でゴシゴシ洗うお皿洗いよりもはるかに気楽で、心地よい家事のひとつになってくれます。
大切な基本は、洗剤を使わずに水とたわしで優しく洗うこと、そして風通しのよい日陰で芯までしっかり乾かすことの2点に尽きます。
クッキングシートやキャベツの葉を活用して汚れを未然に防ぐ工夫を取り入れれば、洗う手間そのものを最小限に抑えることも可能です。
天然木は手をかけてあげた分だけ風合いが増し、使うほどに手に馴染む一生ものの道具へと育っていきます。
今日から無理のないお手入れを毎日の習慣にして、湯気あふれる豊かな蒸し料理の時間を存分に楽しんでみてください。

