ビーフシチューをごちそうにしようと張り切って作ってみたものの、お肉がパサついて硬くなったり、逆に野菜がドロドロに溶けて形がなくなったりした経験はありませんか。
お肉を柔らかく仕上げる頼もしい相棒といえば圧力鍋ですが、使い方や具材を入れる順番を少し間違えると、ルーが焦げ付いてしまったり安全ピンが詰まったりといったトラブルが起きることもあります。
特に市販の固形ルーはとろみが強いため、加圧調理の扱いにはちょっとしたコツが必要です。
この記事では、牛すね肉やかたまり肉をとろとろに柔らかくしながら、野菜の形もしっかり残す本格ビーフシチューの作り方を詳しくまとめました。
下処理のポイントから圧力鍋ならではの安全ルール、翌日も美味しく食べる温め直しの工夫まで、分かりやすくお伝えします。
- 圧力鍋で牛肉が柔らかくなる仕組みと選び方
- 煮崩れや焦げ付きを防ぐ具材の投入タイミング
- お肉がホロホロになる下処理と調理工程
- 失敗したときのリカバリーと保存・温め直しのコツ
圧力鍋で作るビーフシチューの魅力
ビーフシチューを普通の鍋で煮込むとなると、お肉が柔らかくなるまでに2時間も3時間も火の番を続けなければなりません。
コンロに張り付いている時間はお母さんにとってなかなかの負担ですし、ガス代や電気代も気になるところです。
圧力鍋を活用すれば、そんな長時間の煮込みを驚くほど短縮しながら、お店のような本格的な味わいをおうちで再現できますよ。
煮込み時間を大幅に短縮できる理由
普通の鍋でお湯を沸かすと、どれだけ強火にしても100度以上には上がりません。これは水が蒸気になって逃げていくためです。
ところが圧力鍋はフタを完全に密閉して蒸気を閉じ込めるため、鍋の中の気圧がぐっと高くなります。
気圧が高くなると水の沸点が約110度から120度近くまで跳ね上がります。つまり、普段よりも高い温度の熱をお肉の芯まで一気に届けることができるわけです。
高温高圧の状態で加熱することで、通常の鍋なら何時間もかかる加熱工程を、加圧時間わずか15分から25分程度にまで縮めることができます。
忙しい夕方の時間帯でも、手早くごちそうを用意できるのは本当にありがたいですよね。
牛すね肉やかたまり肉が柔らかくなる仕組み
シチュー用としてよく売られている牛すね肉や牛もも肉、牛肩ロース肉には、筋肉を束ねる結合組織である「コラーゲン」という硬い繊維がたくさん含まれています。
このコラーゲンは、普通に焼いたり短時間煮たりするだけでは硬いままで、噛み切るのも一苦労です。
ところが、70度以上の熱をじっくり与え続けると、硬いコラーゲンがゼラチンというぷるぷるの柔らかい成分に変化します。
高温高圧の環境を作り出せる圧力鍋なら、繊維の奥深くまで素早く熱が浸透し、短時間でゼラチン化を促してくれます。
パサつきがちなお肉がしっとり仕上がり、スプーンでほぐれるほどの柔らかさを生み出してくれるのです。
家族が喜ぶ本格的な味わいを家庭で再現
高い圧力で煮込むメリットは、お肉の食感だけにとどまりません。お肉からあふれ出た旨味やゼラチン質がスープ全体に溶け込み、ソースに深いコクと艶やかなとろみを与えてくれます。
洋食屋さんで食べるような、お肉の旨味がぎゅっと凝縮された濃厚なデミグラスソースの味わいが、市販のルーと身近な野菜を使ってパパッと作れてしまいます。
休日のディナーやお誕生日、クリスマスのメニューに出すと、夫や子どもから「今日のごはん、まるでお店みたい!」と歓声が上がること間違いなしですよ。
お肉が柔らかくなる牛肉の部位選び
ビーフシチューの仕上がりを左右する最大の決め手は、なんといってもお肉の部位選びです。
スーパーの精肉コーナーに行くとさまざまな牛肉が並んでいますが、圧力鍋の特性に合った部位を選ぶことで、仕上がりの柔らかさとジューシーさが格段に変わってきます。
ゼラチン質が豊富な牛すね肉
個人的に最もおすすめしたいのが「牛すね肉(スネ肉)」です。牛の足の筋肉部分なので運動量が多く、普段は筋張っていてかなり硬い部位なのですが、そのぶんコラーゲンがみっちり詰まっています。
この硬い筋こそが、圧力鍋の魔法にかかると極上のとろとろ食感に化けてくれます。煮汁にも濃厚な旨味が溶け出すため、シチュー全体のコクが一段と深まるのも魅力的なところ。
少し煮込み時間が長めでも崩れにくく、ごちそう感をしっかり演出したいときには迷わず牛すね肉を手に取ってみてください。
程よい脂身でコクが出る牛肩ロース肉
「すね肉のとろっとした食感もいいけれど、お肉らしいジューシーな旨味もしっかり味わいたい」という方には、牛肩ロース肉がぴったりです。
赤身の間にほどよくサシ(脂身)が入っており、濃厚な風味と柔らかさをバランスよく楽しめます。
加熱してもパサつきにくく、お肉の繊維がほろほろと口の中でほどける心地よい食感に仕上がります。
子どもから大人まで万人受けする味わいなので、家族みんなで囲む普段のごちそうシチューに重宝する部位ですね。
あっさり食べやすい牛もも肉
脂っこいお肉が少し苦手な方や、ヘルシーに仕上げたいときに向いているのが牛もも肉です。赤身の割合が非常に高く、脂肪分が控えめなので、お肉本来の力強い旨味をストレートに味わえます。
ただし、もも肉は脂身が少ないぶん、加圧しすぎると水分が抜けて繊維がパサパサになりやすいという繊細な一面も持っています。
牛もも肉を使う場合は、下味をしっかり揉み込んだり、加圧時間をすね肉よりも少し短めに設定したりする工夫を取り入れてみてください。
| 部位 | 肉質の特徴 | 仕上がりの食感 | おすすめの用途 |
|---|---|---|---|
| 牛すね肉 | 筋が多くコラーゲンが豊富 | とろとろ・プルプル | 本格派の濃厚シチュー |
| 牛肩ロース肉 | 赤身と脂身のバランスが良い | ジューシー・ほろほろ | 家族みんなで食べる定番 |
| 牛もも肉 | 脂肪分が少なく赤身がメイン | あっさり・噛みごたえあり | 脂を控えたいヘルシー志向 |
下ごしらえでお肉を格上げするコツ
お肉を買ってきたら、そのまま鍋に放り込みたくなる気持ちをぐっとこらえて、ほんの少しの下ごしらえをしてあげましょう。
このひと手間を惜しまないだけで、お肉特有のくさみが消え、繊維の奥までしっとりとした仕上がりになります。
常温に戻して均一に火を通す
冷蔵庫から取り出したばかりの冷え切ったお肉をいきなり熱い鍋に入れてしまうと、表面だけが急激に縮んで硬くなり、中まで均等に熱が伝わりにくくなります。
さらに鍋の温度が一気に下がるため、美味しそうな焼き色を綺麗につけることができません。
調理を始める20分から30分ほど前に冷蔵庫から出しておき、お肉の中心部まで室温に近づけておきましょう。これだけで急激な温度変化によるお肉の収縮を防ぎ、柔らかい食感を保ちやすくなります。
夏場など室温が高い季節は、傷まないよう置きすぎに注意してくださいね。
大きめの角切りで縮みを防ぐ
お肉を包丁で切るときは、普段のカレーやシチュー用のお肉よりもひと回りからふた回り大きめの4〜5センチ角にカットするのが鉄則です。
牛肉は加熱すると水分や脂が抜け、ぎゅっと縮む性質があります。小さく切りすぎると、煮上がったときにお肉がどこかへ消えてしまったり、存在感が薄れてパサつきが目立ったりしてしまいます。
「ちょっと大きすぎるかな?」と感じるくらいのゴロッとした大きさで切っておくと、仕上がったときに贅沢なボリューム感をしっかり楽しめますよ。
塩こしょうと小麦粉のコーティング
切ったお肉には、焼く直前に塩こしょうを振り、表面全体に薄く小麦粉(薄力粉)をまぶしておきます。この小麦粉がとても優秀な働きをしてくれるのです。
小麦粉がお肉の表面を薄い膜のように覆うことで、加熱中に中の美味しい肉汁が外へ逃げ出すのを防いでくれます。
さらに、表面を香ばしく焼き固めたときの旨味を閉じ込め、後から加える煮汁に適度な自然のとろみをつけてくれる効果もあります。
余分な粉は手でパタパタとはたき落とし、うっすら白くまとわせる程度にするのが上手に仕上げるコツですね。
赤ワインで漬け込む柔らかさの裏技
時間があるときは、焼く前のお肉を赤ワインに30分から1時間ほど漬け込んでおく方法も試してみてください。
赤ワインに含まれる酸性の成分がお肉の繊維を優しくほぐし、保水力を高めてくれるため、より柔らかくジューシーに仕上がります。
漬け込みに使った赤ワインは捨てずに、煮込み用の水分としてそのまま鍋に加えれば無駄がありません。お肉のくさみを消しつつ、芳醇な香りと深みのある酸味をシチューにプラスできる一石二鳥の下ごしらえです。
◆ワンポイントアドバイス
安価なテーブルワインやお料理用の赤ワインで十分美味しく仕上がります。
酸味が強すぎるワインを使うと酸っぱさが残ってしまうことがあるので、普段飲んで美味しいと感じるフルーティーなミディアムボディの赤ワインを選ぶのが私のイチオシです。
具材別の切り方と煮崩れ防止の工夫
ビーフシチューの主役はお肉ですが、彩りを添える野菜たちも欠かせない名脇役です。
しかし、圧力鍋の強い蒸気と高温にさらされると、野菜はあっという間に柔らかくなりすぎてドロドロに溶けてしまいがち。野菜の食感や甘みをきちんと生かすための切り方と工夫を知っておきましょう。
玉ねぎはくし形とみじん切りの使い分け
玉ねぎは切り方を変えて「溶かす用」と「具材として食べる用」の2種類を用意すると、シチュー全体のクオリティがぐんと上がります。
半分はみじん切りやすすぎ切りにして、お肉と一緒に最初からしっかり炒めて加圧します。こうすると玉ねぎがスープに完全に溶け込み、自然な甘みとコク深いベースを作ってくれます。
もう半分は大きめのくし形に切り、後から加えて軽く煮込むことで、シャキッとした食感とみずみずしい甘みを具材として楽しむことができますよ。
にんじんとじゃがいもは大きめの乱切り
にんじんは皮をむいて大きめの乱切りにし、じゃがいもは芽を取り除いて半分または4等分のゴロッとした大きさに切ります。小さく切ってしまうと、煮上がったときにお汁の中に溶け出してしまいます。
特にじゃがいもは品種選びも大切です。男爵いもはホクホクして美味しいのですが非常に煮崩れしやすい性質があります。
煮込み料理には、粘り気があって煮崩れしにくい「メークイン」を使うのがおすすめです。角を少し面取りしておくと、鍋の中でぶつかり合っても崩れにくくなり、見た目も美しく仕上がります。
マッシュルームとブロッコリーの後入れ
マッシュルームは煮込みすぎると縮んで黒っぽくなってしまい、ブロッコリーは圧力鍋にかけると一瞬で黄色く変色してボロボロに崩れてしまいます。
マッシュルームは石づきを落として縦半分に切り、圧力をかけ終わった後の仕上げの煮込み段階で投入しましょう。
ブロッコリーは圧力鍋には入れず、別の小鍋で塩ゆでするか電子レンジで加熱しておき、器にシチューを盛り付けた後にトッピングとして添えるのが正解です。
鮮やかな緑色が加わるだけで、食卓が一気に華やかになりますね。
基本の圧力鍋ビーフシチューの作り方
ここからは、おうちで失敗なく作れる基本のビーフシチューの調理工程を順を追って解説します。
ガス火の一般的な圧力鍋はもちろん、火加減の調整が自動で安心な電気圧力鍋でも基本的な流れは同じですので、お持ちの器具に合わせて参考にしてください。
材料の分量と下準備の確認
4人分の標準的な材料の目安です。ご家庭のお好みに合わせてお肉の量を増やしても美味しく作れますよ。
- 牛すね肉(または肩ロース肉):400〜500g
- 玉ねぎ:大2個
- にんじん:1本
- じゃがいも(メークイン):2個
- マッシュルーム:1パック
- ブロッコリー:1/2株(彩り用)
- にんにく(みじん切り):1片分
- バター(またはサラダ油):15g
- 赤ワイン:200ml
- 水:400〜500ml(ルーの箱の指定量より2割ほど少なめ)
- ローリエ:1枚
- 市販のビーフシチュールー:1箱(約8皿分前後の半分〜1箱分)
- 塩こしょう、小麦粉:適量
牛肉の表面をしっかり焼き付ける工程
まず圧力鍋にバターとにんにくを入れて弱火にかけ、香りが立ったら中火にします。塩こしょうと小麦粉をまぶした牛肉を並べ入れ、表面全体を香ばしく焼き付けていきましょう。
ここでのポイントは、お肉を頻繁に触らず、じっくりと濃いきつね色の焼き目をつけることです。
この焼き目が「メイラード反応」という香ばしい風味を生み出し、お肉の旨味をしっかり閉じ込めてくれます。表面がこんがり焼けたら、一旦お皿に取り出しておきます。
香味野菜を炒めて旨味を引き出す
お肉を取り出した鍋には、お肉から出た脂と美味しい焦げ目が残っています。そこに薄切り(またはみじん切り)にした玉ねぎを投入し、中火で炒めていきましょう。
鍋底に張り付いたお肉の旨味を木べらなどでこそげ落とすようにしながら炒めるのがコツです。
玉ねぎがしんなりして透き通り、ほんのりあめ色に色づくまでじっくり炒めることで、シチューの味に奥深い甘みと豊かな香りが加わります。
赤ワインと水を入れて加圧調理する
玉ねぎが炒まったら、先ほど取り出したお肉を鍋に戻し入れます。
ここで赤ワインを一気に注ぎ、火を強めて煮立たせましょう。沸騰させてアルコール分をしっかり飛ばすことで、渋みが抜けて芳醇な風味だけが残ります。
アルコールが飛んだら、水とローリエを加えます。フタをしっかりセットして強火にかけ、圧力がかかり始めたら弱火に落として加圧時間を計ります。
加圧時間は、牛すね肉なら約20分から25分、肩ロース肉なら約15分から20分が目安です。時間が来たら火を止め、圧力が完全に下がるまでそのまま自然放置して待ちましょう。
ルーを入れるタイミングと煮込みのコツ
圧力鍋調理で最も注意しなければならないのが、ルーを入れるタイミングです。これを知らずに最初からルーを入れてしまうと、大惨事になりかねません。
安全に、そして美味しく仕上げるための大切なルールを整理しておきましょう。
圧力をかける前にルーを入れてはいけない理由
「最初から全部の材料とルーを入れて加圧すれば楽なのでは?」と思うかもしれませんが、これは絶対にやってはいけないNG行動です。
安全に関する重要なお知らせ
市販のカレールーやシチュールー、多量の片栗粉など粘り気の強い調味料を入れたまま圧力鍋を加圧密閉すると、蒸気の抜け道であるノズルや安全弁にとろみが詰まり、鍋の中の圧力が正常に抜けなくなる危険性があります。
最悪の場合、フタが突然開いて高温の具材が飛び散る事故につながる恐れがあるため、各メーカーの取扱説明書でも厳しく禁止されています。
また、とろみがある液体は鍋底に熱が偏りやすく、加圧中に底が真っ黒に焦げ付いてしまう原因にもなります。ルーは必ず「加圧が終わり、圧力が完全に抜けてフタを開けた後」に入れるのが鉄則です。
後入れ野菜を加えるベストな手順
お肉の加圧が終わり、安全ピンが下がったことを確認してからフタを開けます。ここで、大きめに切っておいたじゃがいも、にんじん、くし形の玉ねぎを投入しましょう。
野菜を入れてから再びフタをして、今度は「低圧」または「3分から5分程度の短い加圧」をかけるか、フタをせずに普通の鍋として中火で10分ほどコトコト煮込みます。
このようにお肉と野菜の加熱時間を分けることで、お肉は口の中で溶けるほど柔らかいのに、野菜は形がしっかり残ってホクホクという理想の仕上がりを実現できるのです。
ルーを溶かして弱火でとろみをつける
野菜に竹串がスッと通るくらい柔らかくなったら、一度完全に火を止めます。煮立ったスープの中にいきなり固形ルーを入れると、ダマになって溶け残りの原因になってしまいます。
火を止めた状態でルーを割り入れ、お玉や木べらで優しくかき混ぜながら完全に溶かしましょう。
全体が均一に混ざったら再び弱火にかけ、時々鍋底を優しくこそげるように混ぜながら、10分ほどコトコト煮込んでとろみをつけていきます。
弱火でじっくり熱を加えることで、ルーに含まれるデンプンにしっかりと火が通り、艶やかでなめらかなとろみに仕上がりますよ。
味わいを深める隠し味と本格アレンジ
市販のルーで作るビーフシチューも十分に美味しいですが、ご家庭にある身近な調味料をちょい足しするだけで、レストランで長時間煮込んだような深みと重厚感を出すことができます。お好みに合わせて試してみてくださいね。
味に深みを出すケチャップとウスターソース
最も手軽で失敗がない隠し味が、トマトケチャップとウスターソースの組み合わせです。ルーを溶かした後の煮込み段階で、それぞれ大さじ1ずつ加えてみてください。
ケチャップに含まれるグルタミン酸とお肉のイノシン酸が合わさることで、旨味の相乗効果が生まれます。
さらにケチャップの程よい酸味が全体の味をキュッと引き締め、ウスターソースのスパイスや野菜エキスが複雑なコクをプラスしてくれます。味がぼんやりして決まらないときにも頼りになる救世主ですね。
酸味とコクを補うバルサミコ酢やチョコレート
大人の味わいに仕上げたいときは、バルサミコ酢を小さじ1〜2ほど垂らすのがおすすめです。
加熱されることでツンとした酸味がまろやかになり、ぶどうの凝縮された果実味と上品な酸味がデミグラスソースの風味をワンランク引き上げてくれます。
また、ビターチョコレートをひとかけ(5〜10g程度)溶かし入れるのも有名な裏技です。カカオのほのかな苦味と油脂分が加わることで、ソースに深みのある艶とどっしりとしたコクが生まれます。
子ども向けにはミルクチョコでも構いませんが、甘みが強くなりすぎないよう少量から調整してください。
仕上げのバターと生クリームでリッチに演出
火を止める直前に、冷たい無塩バターを10gほど落として全体になじませてみてください。ソースにまろやかなコクが加わり、表面がピカピカと輝く美しい仕上がりになります。
これはフランス料理の「モンテ」と呼ばれるプロの技法です。
器に盛り付けた後、仕上げにコーヒーフレッシュや生クリームを細く円を描くように回しかけると、見た目の美しさが劇的にアップします。
緑色のブロッコリーと白いクリームのコントラストが映えて、まるでおしゃれな洋食レストランの一皿のようにおもてなし感が高まりますよ。
◆ワンポイントアドバイス
隠し味を入れるときは、必ずスプーンで味見をしながら「ほんの少しずつ」足すのが失敗しない鉄則です。入れすぎると元のデミグラスソースの風味が消えてしまうので、隠れた引き立て役に徹してもらいましょう。
失敗したときの原因とリカバリー方法
「レシピ通りに作ったはずなのに、なぜかお肉が硬い」「ソースが水っぽくてサラサラしている」といったトラブルが起きても、諦めて落ち込む必要はありません。
原因を正しく見極めれば、後からしっかりリカバリーすることができます。
お肉がまだ硬いときの追加加圧と煮込み
フタを開けてお肉を味見したとき、まだ中心に弾力があって硬いと感じたら、単純に加熱時間が足りずコラーゲンのゼラチン化が進んでいないサインです。
お肉が硬いときのリカバリー手順
ルーを入れる前であれば、再び圧力鍋のフタをしっかり閉めて、追加で5分から10分ほど加圧してください。
もしすでにルーを入れてしまっている場合は、圧力密閉すると焦げ付きの危険があるため、フタをせずに弱火で30分から40分ほど、底が焦げ付かないよう時々かき混ぜながらコトコト気長に煮込みましょう。
味が薄いまたは濃すぎるときの調整法
味が薄く感じる場合は、野菜から水分がたくさん出たことが原因です。
フタを開けたまま弱火で少し煮詰めて水分を飛ばすか、ルーを半かけ分ほど追加して溶かしてみましょう。塩こしょうをひとつまみ足すだけでも全体の輪郭がはっきりと引き締まります。
逆に煮詰めすぎて味が濃くなってしまったときは、水や赤ワインを少しずつ足して薄めるのも良いですが、無塩のトマトジュースや牛乳を少し加えると、味が薄まるだけでなくマイルドなコクが加わって美味しく仕上がりますよ。
ルーがダマになったときの滑らかな戻し方
沸騰したスープにルーを放り込んだり、混ぜ方が足りなかったりすると、固形ルーがダマになって浮いてしまうことがあります。
ダマを見つけたら、泡立て器を使って優しく円を描くようにかき混ぜるとほぐれやすくなります。
それでも溶け残る場合は、一度ダマをお玉ですくい上げ、小さなボウルや器に移して少量の温かいスープを加え、スプーンの背でペースト状にしっかりすり潰してから鍋に戻してください。
見違えるほどなめらかな舌触りに戻ってくれます。
圧力鍋で作る際の安全管理と注意点
時間短縮で大活躍してくれる圧力鍋ですが、大きな圧力を閉じ込める調理器具だからこそ、正しい安全ルールを守って使うことが何よりも大切です。
事故を防ぎ、長く快適に使うための注意点を確認しておきましょう。
蒸気ノズルとパッキンの事前点検
調理を始める前に、フタの裏側にあるゴムパッキンや蒸気ノズル(蒸気の吹き出し口)を必ずチェックする習慣をつけてください。
蒸気ノズルに前回の料理の汚れやゴミが詰まっていないか、光に透かして覗いて確認しましょう。また、ゴムパッキンが正しく溝にはまっているか、ひび割れや硬化がないかも見ておきます。
パッキンが劣化して隙間ができると、圧力がしっかりかからず調理時間が長くなったり、フタの隙間から高温の蒸気や煮汁が漏れ出したりして危険です。
最大調理量(豆類線・規定線)を守る
圧力鍋の内部には、必ず「最大調理量」を示す刻印線が入っています。具材と水分を合わせた量は、鍋の深さの2/3(豆類の場合は1/3)を超えて入れてはいけません。
たくさんの量を作りたいからといって容量オーバーで詰め込むと、沸騰したときに煮汁が泡立ってノズルを塞ぎ、異常な高圧状態になってしまう危険があります。
家族が多くて大量に作りたい場合は、お持ちの鍋の容量に合わせて2回に分けて作るか、大きめサイズの大容量圧力鍋の導入を検討してみてくださいね。
急激な減圧を避けて自然放置する
加圧時間が終わった後、早く中身が見たいからと無理に蒸気抜き弁を持ち上げて急激に蒸気を逃がすのは避けてください。
急激な減圧を行うと、鍋の中で急激な沸騰(突沸現象)が起き、お肉の大切な旨味を含んだ肉汁が一気に外へ吹き飛んでパサつきの原因になります。
さらに、勢いよく吹き出した高温の蒸気で火傷をするリスクもあります。火を止めたら、圧力が自然に下がるまで15分から20分ほど静かに待つのが、美味しくかつ安全に仕上げるための大切なポイントです。
急冷が必要な例外ケース
青菜を蒸すときなど、急激に冷やす指示がレシピにある場合を除き、お肉の煮込み料理は「自然放置」が基本です。余熱でじわじわと火を通す時間こそが、お肉を柔らかくする大切な熟成タイムになります。
ビーフシチューの保存と翌日の温め直し
たっぷり作って余ったビーフシチューは、翌日になると味がなじんで一層美味しく感じられますよね。
ただし、とろみのある煮込み料理は菌が繁殖しやすい環境でもあるため、正しい保存方法と温め直しのルールをしっかり把握しておきましょう。
ウェルシュ菌を防ぐ素早い冷却と冷蔵保存
カレーやシチューの作り置きで最も警戒しなければならないのが「ウェルシュ菌」という食中毒菌です。この菌は熱に強い芽胞を作り、40度から50度前後の生温かい温度帯で爆発的に増殖します。
鍋に入れたまま一晩コンロの上に放置するのは絶対にやめましょう。
粗熱を取る際は、鍋ごと氷水につけるか、清潔で浅い保存容器に小分けにして表面積を広げ、できるだけ短時間で冷ましてから速やかに冷蔵庫へ入れます。
冷蔵保存の目安は2〜3日以内です。食べるときは毎回しっかり中心部まで加熱してください。
冷凍保存する場合のじゃがいもの扱い
ビーフシチューを冷凍保存したいときは、じゃがいもと人参の扱いに注意が必要です。
特にじゃがいもは、そのまま冷凍すると水分が抜けてスカスカのスポンジのような食感になり、解凍したときに著しく味が落ちてしまいます。
冷凍する予定の分は、あらかじめじゃがいもを取り除くか、フォークの背などで完全にマッシュしてソースに混ぜ込んでしまいましょう。
密閉できる冷凍用保存袋に1食分ずつ平らに入れて空気を抜いて密閉すれば、冷凍庫で約2〜3週間ほど美味しく保存できます。
焦げ付きを防ぐ美味しい温め直しの手順
冷蔵庫から出した冷たいビーフシチューは、ゼラチンと油分が固まってプルプルの煮こごり状になっています。これを強火で一気に温めようとすると、鍋底だけがすぐに真っ黒に焦げ付いてしまいます。
小鍋に移したら、まず大さじ1〜2程度の水か赤ワインを回し入れ、ごく弱火にかけます。木べらで鍋底を優しく絶え間なくかき混ぜながら、ゆっくりと熱を全体に行き渡らせましょう。
全体がふつふつと沸騰し、しっかり湯気が立ち上るまで加熱すれば、出来立てのツヤと風味がよみがえります。
圧力鍋で作るビーフシチューに関するよくある質問(FAQ)
Q1. 圧力鍋を使えばどんな安い牛肉でも柔らかくなりますか?
A. 基本的には筋の多い安価な牛すね肉やかたまり肉ほど、圧力鍋の高温高圧調理によってコラーゲンがゼラチン化し、驚くほど柔らかくなります。ただし、脂身が極端に少ない赤身肉を加圧しすぎると、水分が抜け切って逆にパサパサと硬く感じることがあります。部位に合わせて加圧時間を調整したり、事前の赤ワイン漬けなどで保水力を補うのが美味しく仕上げるコツです。
Q2. 電気圧力鍋でも普通の圧力鍋と同じレシピで作れますか?
A. はい、まったく同じ材料と手順で作ることができますよ。ただし、電気圧力鍋は火を使う一般的な圧力鍋に比べて気圧がやや控えめに設定されている機種が多いため、加圧時間を5分から10分ほど長めに設定するか、本体に搭載されている「牛すじ・煮込みモード」を活用するのがおすすめです。ルーの後入れルールは電気圧力鍋でも同様に必ず守ってくださいね。
Q3. 赤ワインを入れずに水だけでも美味しく作れますか?
A. もちろん水だけでも十分美味しく作れます。小さなお子さんがいてアルコール分がどうしても気になるご家庭では、赤ワインの代わりに全量を水にして、隠し味にトマトケチャップや少量のりんご果汁を足してあげると、赤ワインのような自然な酸味とフルーティーな甘みを補うことができますよ。
Q4. レシピの水の量が普通のシチューより少なく感じるのはなぜですか?
A. 圧力鍋は完全に密閉して調理するため、調理中に外へ蒸発していく水分の量が普通の鍋に比べて極めて少ないからです。さらに玉ねぎなどの野菜からもたっぷりと水分が引き出されるため、箱の表示通りの水を入れてしまうとソースがシャバシャバになってしまいます。表示よりも2割ほど少なめの水分量から作り始めるのがちょうど良いとろみをつける秘訣です。
Q5. 加熱後にお肉の脂が浮いてギトギトするときはどうすればいいですか?
A. 牛肉の脂身が多いと、加圧後に表面に黄色い油の層が浮いてくることがあります。気になる場合は、ルーを入れる前にお玉を使って表面の余分な油をすくい取るか、キッチンペーパーをスープの表面にふわっと乗せてサッと引き上げるだけで、簡単に余分な油を吸い取ってすっきりクリアな味わいに調整できますよ。
まとめ
圧力鍋を上手に使いこなせば、何時間も煮込んだような本格的なとろとろビーフシチューが、おうちで驚くほど短い時間で作れるようになります。難しい技術は必要なく、ポイントを押さえた下処理と、具材や調味料を入れる順番さえ守れば誰でも大成功できますよ。
最後にもう一度、美味しいビーフシチューを作るための大切なお約束をおさらいしておきましょう。
- お肉はコラーゲン豊富な牛すね肉を選び、縮みを考慮して大きめの角切りにする
- 焼く前に室温へ戻し、塩こしょうと小麦粉をまぶして旨味をしっかり閉じ込める
- ルーは最初から入れず、加圧が終わって安全ピンが下がってから溶かし入れる
- 煮崩れしやすい野菜は加圧後に加えるか、短い追加加熱で仕上げて食感を残す
- 冷ますときはウェルシュ菌対策として小分けにし、素早く粗熱を取って冷蔵する
お休みの日の食卓や家族のお祝いの日に、スプーンでほぐれる極上のお肉がゴロッと入った手作りビーフシチューをぜひ作ってみてください。お部屋いっぱいに広がる美味しい香りと、家族の笑顔が広がる素敵なディナータイムになりますように。
