こんにちは。まないたの・・・ 運営者の「mana」です。
新しい包丁を探していると、「モリブデン鋼」という言葉をよく見かけますよね。
プロも使っているらしいけど、モリブデン鋼とは一体何なのか、モリブデンとバナジウムの違いは何か、いまいちピンとこないかもしれません。
それに、ステンレスなのに「モリブデン鋼は錆びる」なんて話も聞くと、デメリットも気になります。
普段の手入れや研ぎ方はどうするのか、VG10やハガネとどっちを選ぶべきか、おすすめのブランドはどこか、悩みは尽きないかなと思います。
この記事では、そんなモリブデン包丁に関する疑問を、manaなりにスッキリ解決していきますね。
- モリブデン鋼の本当の性能とデメリット
- 錆びると言われる理由と正しい手入れ方法
- VG10やハガネなど他の鋼材との明確な違い
- 定番ブランド(ミソノ・藤次郎)の特徴
包丁でモリブデン鋼が選ばれる理由

まずは、なぜ多くの包丁に「モリブデン鋼」が使われているのか、その基本的な特徴や性能について見ていきましょう。
モリブデン鋼とは?基本性能
「モリブデン鋼」って、実はJIS規格みたいなカチッとした工業規格の名前じゃなくて、包丁業界で使われる「通称」に近いみたいですね。
じゃあ、その正体は何かというと、基本はステンレス鋼なんです。
そのステンレスに「モリブデン(Mo)」というレアメタルをちょい足しした合金鋼のことを指します。
なんでモリブデンを加えるかというと、鋼の「焼入れ性」を良くするためだそうです。
焼入れっていうのは、鋼を熱して急に冷やしてカチーンと硬くするプロセスですね。
モリブデンが入っていると、その硬化が均一にしやすくなって、結果として包丁に必要な「強度」と「靭性(ねばり強さ)」が格段にアップします。
この「靭性」がポイントで、ただ硬いだけだと刃が欠けやすいんですけど、モリブデン鋼は粘りがあるので「刃こぼれしにくい」のが大きな特徴です。
業界的には、愛知製鋼さんの「AUS-8(通称8A)」という鋼材が、この「モリブデン鋼」として使われていることが多いみたいです。
このAUS-8が、錆びにくさ、研ぎやすさ、欠けにくさのバランスがすごく取れてて、家庭用にも業務用にもピッタリな鋼材なんですね。
モリブデンとバナジウムの違い
お店で包丁を見ていると、「モリブデン鋼」と書かれているものと、「モリブデンバナジウム鋼」と書かれているものがありますよね。
これ、何が違うんだろうって思いませんか?
実は、今「モリブデン包丁」として売られているものの多くが、この「モリブデンバナジウム鋼」みたいです。
名前の通り、モリブデン(Mo)に加えて「バナジウム(V)」という、これまたレアメタルが添加されています。
じゃあ、バナジウムは何をしているかというと、これがまたイイ仕事をしてくれるんです。
バナジウムは、鋼の組織(結晶粒)をすっごく細かくしてくれる役割があります。
組織が細かくなると、「耐摩耗性」がグーンと上がるんですね。
包丁にとって耐摩耗性が高いということは、つまり「刃がすり減りにくい」=「切れ味がめちゃくちゃ長持ちする」ってことなんです。
- モリブデン: 焼入れ性を高め、強度と靭性(粘り強さ・欠けにくさ)をUP。
- バナジウム: 組織を細かくし、耐摩耗性(切れ味の持続性)をUP。
普通、鋼材って硬くすれば切れ味が長持ちするけど、その分「脆く(もろく)」なって欠けやすくなるんです。
でも、この2つを入れることで、「硬くて長持ち」なのに「粘りがあって欠けにくい」という、相反する性能を高いレベルで両立させているのが、モリブデンバナジウム鋼のすごいところなんですね。
通称8A(AUS-8)との関連
さっき少し触れちゃいましたけど、この「モリブデン鋼」っていう呼び方、もう少し深掘りしてみますね。
面白いことに、この名前はJIS規格とかで「こういう成分のものをモリブデン鋼と呼びます」と厳密に決まっているわけじゃないみたいなんです。
じゃあ何かというと、包丁メーカーさんとか、プロ向けのお店とかで使われる「通称」や「ブランド名」みたいなものなんですね。
そして、その「モリブデン鋼」として売られている包丁の多くが、日本の愛知製鋼さんが作っている「AUS-8(オースエイト)」、通称「8A(ハチエー)」と呼ばれるステンレス鋼材を使っていることが、業界ではよく知られているそうです。
この8A、刃物の名産地・岐阜県関市で昔からすごく愛用されてきた鋼材で、「錆びにくさ」「研ぎやすさ」「欠けにくさ」の3拍子が揃った、本当にバランスの良い鋼材なんです。
じゃあ、なんでメーカーさんは「AUS-8使用!」ってハッキリ書かないことが多いんでしょう?
これはmanaの推測も入りますが、包丁の性能って、鋼材(材料)だけで決まるわけじゃないからかなと思います。
どんなに良い鋼材を使っても、その後の「熱処理(焼入れとか)」や「刃付け」の技術がイマイチだと、性能を引き出せないんですね。
だからメーカーさんとしては、「モリブデン鋼」という呼び方を使うことで、「ウチは8Aみたいな高性能な鋼材を使って、ちゃんと技術を込めて熱処理も刃付けもしてますよ」という、品質の証として使っているんじゃないかなと思います。
モリブデン鋼のデメリット
ここまで良いことばかり話してきたモリブデン鋼ですが、もちろん弱点というか、他の鋼材と比べたときの「デメリット」もあります。
① ハガネ(炭素鋼)と比べると研ぎにくい
これはよく言われることですね。
昔ながらの鉄の包丁(ハガネ)は、鋼材自体が比較的柔らかいので、砥石(といし)で研ぐとスルスル削れて研ぎやすいんです。
一方、モリブデン鋼は硬くて耐摩耗性が高い(すり減りにくい)鋼材です。
それは「切れ味が長持ちする」というメリットであると同時に、「研ぐときに時間がかかる=研ぎにくい」と感じるデメリットにもなるんですね。
② 高級ステンレス鋼と比べると切れ味は劣る
モリブデン鋼(AUS-8)よりも高価格帯のステンレス鋼、たとえば「V金10号(VG10)」や「銀三(ぎんさん)」と比べた場合の話です。
これらの高級鋼材は、モリブデン鋼よりもさらに硬く、鋭い切れ味が出ますし、その切れ味の持続性もやっぱり上です。
「最高の切れ味」を求めると、モリブデン鋼はちょっと物足りないかもしれません。
- ハガネ(鉄)よりは研ぎにくい(硬いから)。
- VG10などの高級ステンレスよりは切れ味の鋭さ・持続性で劣る。
- 一番安いステンレス包丁よりは、もちろん価格が高い。
ただ、これらはあくまで「何と比べるか」次第ですね。
この「弱点がない万能性」こそがモリブデン鋼の最大の価値かなとmanaは思います。
モリブデン鋼は錆びる?
「モリブデン 錆びる」って検索する人が結構いるみたいで、manaも気になってました。
「え、ステンレスなのに錆びるの!?」って思いますよね。
まず結論から言うと、モリブデン鋼はステンレス鋼の一種なので、「めちゃくちゃ錆びにくい」のは事実です。
ハガネの包丁みたいに、使ってちょっと置いただけで茶色く錆びる…なんてことはまずありません。
じゃあ、なんで「錆びる」って話が出るんでしょう?
これは、「ステンレス (Stainless)」という言葉の解釈の違いから来ているみたいです。
Stainlessって、直訳すると「Stain-less(汚れ・錆びが少ない)」という意味で、「Stain-proof(錆びを防止する・絶対に錆びない)」という意味じゃないんですね。
包丁用のモリブデン鋼は、「切れ味」を出すために炭素(C)をある程度含んでいます。
私たちが普段使っているシンクやスプーンに使われるステンレス(こっちは切れ味不要なので炭素が少ない)と比べると、炭素が多い分、理論上は錆びる可能性がゼロではないんです。
具体的には、こんな状況だと錆びる可能性があります。
こんな時は錆びるかも!
- 塩分や酸(レモン、トマト、お酢など)が付いたまま、洗わずに長時間放置した。
- 洗ったあと、濡れたままで放置した(これが一番多いかも)。
とはいえ、これは極端な例ですね。
普通に使っていれば、まず錆びることはないと思います。
もし錆びても、それは表面だけの点錆びとかなので、研磨剤入りのクリーナーとかでこすれば落ちることがほとんどですよ。
包丁でモリブデンを選ぶ

モリブデン鋼の特性がわかったところで、次は具体的なメンテナンス方法や、他の鋼材との比較、おすすめのブランドについて解説していきますね。
モリブデン鋼の手入れ方法
「錆びる可能性がゼロじゃないなら、手入れが大変なんじゃ…」と心配になるかもしれませんが、まったくそんなことないですよ!
モリブデン包丁の日常の手入れは、驚くほど簡単です。
基本は、「使ったら、中性洗剤(普通の食器用洗剤)で洗って、水気をしっかり拭き取る」。
たったこれだけです。
ハガネの包丁だと、洗った後すぐに拭かないとダメとか、油を塗るとか、そういうプレッシャーがありますが、モリブデン鋼は耐食性が高いので、そこまで神経質にならなくても大丈夫。
この手入れに関する精神的なラクさが、家庭で使う上で最大のメリットかなと思います。
錆びさせないための小さなコツ
水気を拭き取るとき、布巾やタオルで拭いたあと、乾いたキッチンペーパーでもう一度刃の部分を拭いてあげると完璧です。
布巾って意外と湿気を含んでいることがあるので、これで完全に水分を取り除くと安心ですよ。
あ、あと「食洗機で洗えますか?」という質問もよく聞きます。
これは、manaとしては非推奨です。
鋼材自体は大丈夫でも、食洗機の高温や高アルカリの洗剤って、刃先のすごくデリケートな部分を痛めたり、ハンドル(柄)の部分の劣化を早めたりする原因になるんです。
大切な包丁を長く使うためにも、「手洗いして、すぐ拭く」を習慣にするのが一番ですね。
モリブデン鋼の研ぎ方とコツ
モリブデン包丁の「研ぎ」に関しても、「研ぎにくい」という意見と、「研ぎやすい」という意見があって、どっちなの?って混乱しますよね。
この矛盾は、「何と比べているか」の違いから来ています。
「研ぎにくい」という意見は、ハガネ(鉄)の包丁と比べた場合です。
さっきも話した通り、ハガネは柔らかいので砥石で削りやすいんです。
それに比べると、硬いモリブデン鋼は「研ぎにくい(時間がかかる)」となります。
「研ぎやすい」という意見は、VG10や粉末ハイス鋼といった、他のもっと硬い高級ステンレス鋼と比べた場合です。
そういうカチカチの鋼材に比べれば、モリブデン鋼(AUS-8)は適度な硬さで、砥石への食いつきも良く、「ステンレスの中では研ぎやすい」と評価されるんですね。
つまり、モリブデン鋼は「ハガネよりは時間かかるけど、カチカチの高級ステンレスよりは全然研ぎやすい」という、ちょうど中間の特性を持っていると理解するのが良さそうです。
そもそも切れ味の持続性が高いので、ハガネの包丁みたいに頻繁に研ぐ必要がないのも嬉しいポイントです。
家庭で使うなら、簡易的なシャープナーでもある程度の切れ味は戻せます。
でも、もし本格的に研いでみたいなら、まずは「中砥石(#1000番くらい)」を一つ持っておくと、モリブデン鋼の本来の切れ味を引き出せるのでおすすめですよ。
モリブデンとVG10はどっち?
包丁選びで「モリブデン鋼」と最後まで悩むライバルが、この「V金10号(VG10)」かなと思います。
「モリブデンとVG10 どっち」問題は、包丁選びあるあるですね。
VG10は、モリブデン鋼(AUS-8)よりもワンランク上の高級ステンレス鋼という位置づけです。
VG10の特徴は、モリブデン鋼よりもさらに硬く、鋭い切れ味が「ものすごく長持ちする」ことです。
耐錆性(錆びにくさ)も、VG10の方がモリブデン鋼よりも優れているとされています。
じゃあ、どっちを選べばいいんでしょう?
選び方の基準
▼モリブデン鋼 (AUS-8) がおすすめな人
- コストパフォーマンスを重視したい。
- いざという時、自分で研ぐことも考えたい(研ぎやすさ重視)。
- 硬いカボチャとかも切るので、刃こぼれのしにくさ(靭性)が欲しい。
- → 家庭での日常使いに最適なバランス型
▼V金10号 (VG10) がおすすめな人
- 初期投資はしてもOK。とにかく最高の切れ味と持続性が欲しい。
- 研ぐのは面倒なので、できるだけ研ぎの頻度を減らしたい。
- → 性能と長切れを追求するハイスペック型
VG10は硬い分、モリブデン鋼に比べると「研ぎにくい」し、「靭性(粘り)」の面でやや劣る(=雑に扱うと欠けやすい)可能性もあります。
どちらが上というより、何を優先するかで選ぶのが正解ですね。
ハガネや銀三との違い
VG10の他にも、よく比較される鋼材がありますね。「ハガネ(炭素鋼)」と「銀三(ぎんさん)」です。
vs. ハガネ(炭素鋼)
これは「切れ味 vs 手入れの簡単さ」の対決です。
「切れ味の鋭さ」だけを追求するなら、研ぎたてのハガネの包丁が持つ、食材に吸い付くような感覚はやっぱりすごいです。
ただし、致命的に錆びやすい。本当にすぐ錆びます。
manaみたいなズボラなタイプだと、管理しきれない自信があります…
モリブデン鋼は、ハガネに迫る実用的な切れ味を持ちながら、メンテナンスが圧倒的にラク。
現代の家庭環境を考えると、ほとんどの人にとってはモリブデン鋼の方が幸せになれるかなと思います。
vs. 銀三(銀紙3号)
銀三は、ちょっとマニアックかもしれませんが、すごく面白い鋼材です。
これは「ハガネの切れ味を持つステンレス」とよく言われます。
ステンレス鋼なんですが、組織がハガネに近くて、すごく鋭利な刃先に仕上げやすい特徴があります。
切れ味の鋭さでは、VG10よりも上だと評価するプロも多いみたいです。
その代わり、錆びにくさではモリブデン鋼やVG10に一歩譲ります。
モリブデン鋼が「万能バランス型」なら、銀三は「ステンレス界の切れ味特化型」といった感じで、プロの和食料理人の方に人気がある鋼材ですね。
おすすめブランド:ミソノ
ここからは、モリブデンバナジウム鋼を採用している定番ブランドを2つ紹介しますね。
面白いことに、これから紹介するミソノも藤次郎も、あとグローバル(GLOBAL)なんかも、主力製品に同じ「モリブデンバナジウム鋼」を使っているんです。
だから、ブランド選びは「鋼材の違い」じゃなくて、「メーカーの仕上げ方(熱処理や刃付け)」や「ハンドルのデザイン哲学」で選ぶことになります。
まずは「Misono(ミソノ)」です。
ミソノは日本を代表する老舗包丁メーカーさんで、プロの料理人から一般家庭まで、本当に幅広く愛されているロングセラーブランドです。
ミソノの「モリブデン鋼」シリーズは、まさに「質実剛健な洋包丁のスタンダード」という言葉がピッタリ。
デザインは、刀身とハンドル(柄)が口金(くちがね)で一体化していて、鋲(びょう)でカシメてある、あの伝統的な洋包丁のスタイルです。
この構造が、衛生的で、持ったときの重量バランスや安定した使いやすさに繋がっています。
「奇抜なデザインより、昔からある信頼と実績のド定番が欲しい」という人や、「クラシックな洋包丁の、あのズシッとした握り心地が好き」という人には、ミソノがすごくおすすめです。
おすすめブランド:藤次郎
もう一つの定番が、刃物の産地・新潟県燕三条のメーカー「藤次郎(Tojiro)」です。
藤次郎は、特にプロの業務用市場でめちゃくちゃ高い評価を得ているブランドですね。
藤次郎の「MVモリブデンバナジウム鋼」シリーズは、プロの過酷な現場での使用に耐える「耐久性」と「耐食性」を重視して設計されているのが特徴です。
もちろん切れ味にも妥協はなくて、職人さんによる業務用の鋭い刃付けが施されています。
あと、藤次郎の面白いところは、三徳や牛刀だけでなく、出刃(でば)や柳刃(やなぎば)といった「和包丁」のラインナップも、このモリブデンバナジウム鋼で豊富に揃えている点です。
藤次郎の和包丁(豆知識)
藤次郎の和包丁シリーズは、ハンドルが伝統的な「朴木(ほおのき)」で、差し柄式(刀身を柄に差し込むタイプ)を採用しています。
これだと、もし柄が古くなったり傷んだりしても、ハンドルだけを交換して使い続けられるんです。
すごく合理的でサステナブルな考え方ですよね。
「家庭でもプロ仕様のタフな包丁を使いたい」という人や、「コストパフォーマンスを重視したい」という人には、藤次郎がすごくフィットするかなと思います。
まとめ:最初の包丁はモリブデン鋼が最適
ここまで、モリブデン鋼について色々とお話ししてきました。
結局のところ、「モリブデン鋼の包丁は買いなのか?」というと、manaは「特に最初の一本や、家庭用のメイン包丁として最適解の一つ」だと感じます。
理由は、モリブデン鋼が持つ「最大公約数的な高性能」にあります。
- ハガネ(鉄)のように「錆びやすい」という致命的な弱点がない。
- 安価なステンレスのように「すぐ切れなくなる」という不満がない。
- VG10などの高級鋼材のように「高価格で研ぎにくい」というハードルがない。
つまり、「錆びにくく手入れが簡単」で、「刃こぼれしにくく丈夫」で、それでいて「切れ味が良く長持ちする」という、包丁に求められる要素をすべて高いレベルでクリアしているんです。
こんな人にモリブデン包丁はおすすめ!
- 料理はよくするけど、手入れが簡単な包丁がいい人。
- 今使ってる包丁の切れ味に不満がある人。
- ハガネの包丁で錆びさせて挫折した経験がある人。
- これから料理を始める初心者の人。
この「圧倒的なバランスの良さ」こそが、モリブデン鋼がプロから家庭まで長く支持されている理由なんですね。
この記事が、あなたの包丁選びの参考になれば嬉しいです!

