まな板って肉用とほかのまな板と分けた方がいいのか、日々の調理で衛生面が気になっているのではないでしょうか。
なぜ肉用まな板を別に用意した方が良いのか、その理由は生肉に潜む食中毒菌の種類と深く関係しています。
実際、農林水産省が推奨する使い分け方法もあり、食中毒を防ぐ調理手順として非常に重要です。
この記事では、肉用まな板の選び方から、肉用まな板は木製とプラスチックどっちがいい?という疑問にお答えします。
それぞれのプラスチック製まな板のメリット・デメリットや木製まな板のメリット・デメリットを比較し、さらにゴム製(合成ゴム・エラストマー)まな板という選択肢も紹介します。
日々の肉用まな板のお手入れ方法まで、総合的に紹介していきます。
- なぜ肉専用のまな板が必要なのかが分かる
- 食中毒予防のための具体的な調理手順を学べる
- 素材別(木・プラ・ゴム)のまな板の特徴が比較できる
- 肉用まな板の正しいお手入れ方法が身につく
なぜまな板は肉用とほかのとの使い分けが重要か

- なぜ肉用まな板が必要なのか
- 生肉に潜む食中毒菌の種類
- 農林水産省が推奨する使い分け方法
- 食中毒を防ぐ調理手順
なぜ肉用まな板が必要なのか
肉専用のまな板を用意する最大の理由は、「二次汚染」による食中毒を防ぐためです。
生の肉や魚介類には、食中毒の原因となる細菌やウイルスが付着している可能性があります。
もし、生の肉を切ったまな板や包丁を洗わずに、そのままサラダ用の野菜や果物など、加熱せずに食べる食材を切ってしまうとどうなるでしょうか。
まな板に残っていた菌が、次に切った食材に付着してしまいます。これが「二次汚染」です。
肉に付着していた菌は加熱すれば死滅しますが、生で食べる野菜に移ってしまっては、菌がそのまま口に入ることになり、食中毒を引き起こす大きな危険があります。(参照:近畿農政局)
この危険を根本から断ち切るために、生の肉を切るための専用まな板を用意することが、家庭でできる最も効果的な食中毒予防策の一つとなります。
生肉に潜む食中毒菌の種類

生の食肉には、私たちの健康に影響を及ぼす可能性のある、いくつかの食中毒菌が付着していることが指摘されています。これらの菌は、適切な加熱によって死滅させることができますが、生の状態で他の食品を汚染させないよう、細心の注意が必要です。
代表的な菌として、以下のようなものが挙げられます。
食肉で注意すべき主な食中毒菌
カンピロバクター
特に鶏肉から検出されることが多いとされています。厚生労働省によれば、比較的少ない菌量(100個程度)でも食中毒を発症することがあるとされ、注意が必要です。(参照:厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」)
腸管出血性大腸菌(O157、O111など)
主に牛などの家畜の腸内に存在すると言われています。
牛肉の表面に付着している可能性があり、生焼けのハンバーグや加熱不十分な焼肉などで食中毒が発生する事例が報告されています。
サルモネラ属菌
鶏肉、豚肉、牛肉のほか、鶏卵などにも存在する可能性があります。
この菌も加熱によって死滅しますが、汚染された食品を食べてから半日~2日程度で発症することが多いとされています。
これらの菌は目に見えないため、「この肉は安全」と判断することは不可能です。
だからこそ、「肉には菌が付着している可能性がある」という前提で調理器具を管理することが重要になります。
生肉をシンクで洗うのは危険です
お肉のドリップ(赤い汁)が気になっても、調理前にシンクで生肉を洗うのは避けてください。
農林水産省は、肉を洗った際の水しぶきが、周囲のシンクや、近くに置いてある他の食材、調理器具(スポンジやふきんなど)に飛び散り、かえって食中毒菌を拡散させてしまう危険性があると注意を呼びかけています。
ドリップはキッチンペーパーなどで静かに拭き取るようにしましょう。
農林水産省が推奨する使い分け方法
家庭での食中毒予防について、農林水産省は「まな板は食中毒を防ぐ盾」として、その衛生的な使い方を推奨しています。
最も安全で理想的な方法は、複数のまな板を食材ごとに使い分けることです。
理想的な使い分けの例
- 生肉専用 のまな板
- 魚介類専用 のまな板
- 野菜・果物専用 のまな板
- 調理済み食品用 のまな板(パンやハム、ちくわなどを切る用)
このように細かく分けることで、菌の交差汚染(二次汚染)のリスクを最小限に抑えることができます。(参照:農林水産省 食中毒予防調理器具・調理編、食中毒予防3原則)
ただ、現実的にキッチンで4枚もまな板を管理するのは難しい場合もあるでしょう。
そのような場合でも、最低限、「生の肉や魚を切るまな板」と「それ以外(野菜や調理済み食品など)を切るまな板」の2枚に分けることが強く推奨されます。
まずは「生もの用」と「その他用」の2枚から始めてみるのが、現実的で効果的な第一歩ですね。
食中毒を防ぐ調理手順
「どうしてもまな板は1枚でやりくりしたい」という場合、あるいは衛生管理をさらに徹底したい場合は、食材を切る順番を厳守することが極めて重要です。
農林水産省も推奨している、二次汚染を防ぐための基本的な切る順番は以下の通りです。
1. 野菜・果物(生で食べるもの)
最初に、サラダ用のレタスやトマト、デザートのリンゴなど、加熱せずにそのまま口にする食材から切ります。
これにより、まな板が最も清潔な状態で、安全な食材の調理を終えることができます。
2. 魚介類
次に、魚介類を切ります。
3. 生肉
食中毒菌が付着している可能性が最も高いと考えられる生の肉類を、必ず最後に切ります。
この順番を守れば、仮に肉に菌が付着していたとしても、すでに切り終えた野菜や果物に菌が移るのを防げます。
もし順番を逆にして、肉を切った後に野菜を切れば、まな板を介して菌が野菜に付着してしまいます。
食材を変えるたびに洗うのが基本
上記の順番で切る場合でも、本来は食材グループが変わるごと(例:野菜を切り終え、次に魚を切る前)に、まな板と包丁を一度食器用洗剤でしっかり洗い、水分を拭き取るのが理想的な手順です。
面倒に感じるかもしれませんが、この一手間が家族を食中毒から守ることにつながります。
素材別まな板肉用の特徴と選び方

- 肉用まな板の選び方
- 肉用まな板は木製とプラスチックどっちがいい?
- プラスチック製・木製まな板のメリット・デメリット
- ゴム製(合成ゴム・エラストマー)まな板の選択
- 肉用まな板のお手入れ方法
肉用まな板の選び方
肉専用のまな板を選ぶ際に最も重視すべきポイントは、野菜用まな板とは少し異なります。
野菜用であれば「刃当たり」や「デザイン」も重要ですが、肉用は「衛生管理のしやすさ」が最優先されます。
以下の点をチェックして選ぶことをおすすめします。
1. 消毒方法に対応しているか
肉の脂汚れや菌を徹底的に除去するため、強力な消毒方法に対応している素材が望ましいです。
- 塩素系漂白剤が使用できるか
- 熱湯消毒が可能か(耐熱温度が高いか)
- 食器洗い乾燥機が使用できるか
これらの条件を満たす素材は、衛生的に保ちやすいため肉用に適しています。
2. 色で使い分ける
機能面ではありませんが、「うっかり使い間違える」ことを防ぐために、視覚的に区別するのは非常に有効な方法です。
例えば、肉用は「赤」や「黒」、野菜用は「白」や「緑」など、一目でわかる色違いのまな板を揃えることで、家族の誰もが間違えずに使い分けられます。
3. 傷がつきにくく、汚れが落ちやすい
肉の脂は冷えると固まり、汚れが落ちにくくなります。
また、まな板に深い傷がつくと、その溝に汚れや菌が入り込み、洗浄しても除去しにくくなります。
そのため、表面が滑らかで傷がつきにくい素材、あるいは傷がついても菌が繁殖しにくいとされる素材(抗菌仕様など)が適しています。
肉用まな板は木製とプラスチックどっちがいい?

肉用のまな板を選ぶ際、伝統的な「木製」と普及している「プラスチック製」、どちらが良いか悩むところです。
結論から言いますと、衛生管理の手軽さと確実性を最優先する「肉用」のまな板としては、プラスチック製(または後述するゴム製)に分があると言えます。
木製のまな板は、「トントン」という心地よい音や、包丁の刃を傷めないソフトな刃当たりなど、調理道具としての魅力にあふれています。
しかし、肉の脂やドリップが染み込みやすく、塩素系漂白剤が使えない(または変色・劣化の原因になる)製品が多いなど、衛生管理の面で少し手間がかかります。
もちろん、木製でもヒノキやヒバのように抗菌作用を持つとされる素材もありますが、日々のこまめな手入れ(使用後すぐに洗い、完璧に乾燥させる)が前提となります。
それぞれの特性を理解し、ご自身の調理スタイルや手入れにかけられる時間に合わせて選ぶことが大切です。
プラスチック製まな板のメリット・デメリット

プラスチック(樹脂)製のまな板は、手軽さと衛生管理のしやすさから、肉用まな板として非常に人気があります。
軽量で扱いやすく、多くの製品が食洗機に対応している点も魅力です。
また、色のバリエーションが豊富なため、前述した「色による使い分け」にも最適です。
| メリット | 塩素系漂白剤や熱湯消毒が可能な製品が多く、衛生管理が楽 軽量で扱いやすく、洗う際の負担が少ない 水切れが良く、速く乾きやすい 色の種類が豊富で、食材ごとの使い分けに便利 比較的安価な製品が多く、傷んだら気軽に買い替えやすい 食洗機対応の製品が多い | 
|---|---|
| デメリット | 素材が硬いため、包丁の刃当たりが硬く、刃こぼれの原因になりやすい 深い包丁傷がつきやすく、その溝に汚れや菌が入り込むと黒ずみやすい 軽い製品は、切る際にまな板自体が滑りやすいことがある 熱に弱く、熱い鍋などを置くと変形することがある | 
傷や黒ずみは交換のサイン
プラスチック製まな板の表面に深い傷が目立ったり、漂白しても黒ずみが取れなくなったりしたら、それは傷の奥で菌が繁殖しているサインかもしれません。
衛生面を考慮し、定期的に新しいものと交換することを推奨します。農林水産省も「傷が多くなったら交換!」と呼びかけています。
木製まな板のメリット・デメリット

木製のまな板は、その優れた刃当たりと、使い込むほどに味わいが出る点から、料理好きの方に根強く愛されています。
イチョウ、ヒノキ、桐、ホオなど、木の種類によっても特徴が異なります。
包丁の刃を優しく受け止めるため、大切な包丁を長く使いたい方にとっては非常に魅力的な素材です。
| メリット | 包丁の刃当たりが非常に柔らかく、刃を傷めにくい 適度な弾力性があり、食材を切る際の腕への負担が少ない ヒノキやヒバなどの木材は、素材自体が持つ天然の抗菌作用が期待できる (種類によるが)適度な重さがあり、調理中に安定しやすい 表面を削り直すことで、長く愛用することが可能 | 
|---|---|
| デメリット | 水分を吸収しやすく、乾燥が不十分だとカビや黒ずみの原因になる 塩素系漂白剤が使えない(変色・劣化の原因)製品がほとんど 肉や魚のニオイが移りやすい 使用後はすぐに洗い、風通しの良い場所でしっかり乾燥させる手間がかかる 食洗機は基本的に使用不可(反りや割れの原因になる) | 
木製まな板を肉用として使う場合は、使用後にすぐにタワシなどで木目に沿って洗い、熱湯消毒(可能な場合)をした後、風通しの良い日陰で木目を縦にしてしっかり立てて乾かすなど、特に丁寧な管理が求められます。
ゴム製(合成ゴム・エラストマー)まな板の選択

「プラスチックの衛生管理の手軽さ」と「木製のソフトな刃当たり」。
この二つの利点を併せ持つ素材として、近年急速に人気を集めているのが合成ゴム製やエラストマー製のまな板です。
プロの料理家が愛用する「パーカーアサヒ」のクッキンカットなどが有名ですが、家庭向けにも「ビタクラフト」や「ラバラバ」など、多くの製品が登場しています。
これらは、プラスチックのように水分をほとんど吸収しないため水切れが良く、乾きが早いのが特徴です。
そのため菌が繁殖しにくく、非常に衛生的です。
さらに、木のように適度な弾力性があるため、包丁の刃を傷めにくく、快適な切り心地を提供してくれます。
ゴム製・エラストマー製の主な特徴
メリット:
・木に近いソフトな刃当たりで、包丁に優しい
・適度な弾力で包丁傷がつきにくい(または傷が目立ちにくい)
・吸水性が低く、水切れが抜群で衛生的
・塩素系漂白剤や熱湯消毒が可能な製品が多い
・ニオイ移りや色移りがしにくい
デメリット:
・プラスチック製に比べて重い製品が多い(その分、安定感はある)
・熱に弱い製品もあり、食洗機や熱湯消毒の可否は製品ごとの確認が必須
・価格が比較的高価な傾向がある
手入れの手軽さと調理の快適さを両立させたいと考えるなら、肉用まな板として非常に有力な選択肢となるでしょう。
肉用まな板のお手入れ方法

肉を切った後のまな板は、目に見えない菌が付着していることを前提に、正しい手順で洗浄・消毒することが不可欠です。
農林水産省も、中性洗剤だけでなく熱湯や塩素系漂白剤での消毒を推奨しています。
1. まず「水」で洗い流す
最も重要なポイントです。肉や魚の血液・脂といったタンパク質汚れは、いきなりお湯をかけると熱で凝固してしまいます。
固まった汚れはまな板の傷に入り込み、菌の温床となるため、必ず最初に「水」でしっかり洗い流してください。
2. 食器用洗剤で洗う
水で汚れを流した後、スポンジ(できれば調理器具専用のもの)に食器用洗剤をつけ、両面とも丁寧に洗います。
包丁傷の内部を意識して、しっかり泡立てて洗いましょう。
3. 消毒を行う
洗剤で洗い流した後、食中毒予防の仕上げとして消毒を行います。
素材に合わせて、以下のいずれかの方法を選んでください。
・熱湯消毒(プラスチック・ゴム・木)
耐熱温度を確認の上、まな板全体に熱湯(85℃以上で90秒程度が目安)をまんべんなく回しかけます。
反りが心配な場合は、片面だけにかけるのではなく、両面に手早くかけるようにします。
・塩素系漂白剤(プラスチック・ゴム ※木製は不可)
素材が対応している場合、最も手軽で強力な消毒方法です。
規定の濃度に薄めた漂白剤をキッチンペーパーに含ませてまな板に貼り付ける「パック」方法や、スプレータイプの漂白剤を吹きかける方法があります。
その後、流水で漂白剤を完全に洗い流します。
・アルコール消毒(全素材)
食品にも使えるアルコール除菌スプレーを吹きかける方法も手軽です。
洗浄後、水気を拭き取ったまな板にスプレーします。
4. 完璧に乾燥させる
洗浄・消毒後、最も重要なのが乾燥です。
菌は水分がある環境で爆発的に増殖します。
清潔なふきんやキッチンペーパーで水気を拭き取り、まな板スタンドなどを利用して風通しの良い場所で立てて保管し、中までしっかり乾かしましょう。
食中毒を防ぐ肉用まな板とほかのまな板の使い分け術を総括
- 肉用まな板は食中毒を防ぐ「二次汚染」の防止に不可欠
- 生の肉や魚を切ったまな板で野菜を切ると菌が付着する危険がある
- 生肉にはカンピロバクターやO157などの食中毒菌がいる可能性
- 農林水産省は「肉用」「魚用」「野菜用」の使い分けを推奨
- 最低でも「生もの用」と「それ以外」の2枚を準備する
- 1枚しかない場合は「野菜」→「魚」→「肉」の順で切る
- 食材を変えるごとにまな板と包丁を洗うのが理想
- 肉用まな板は「衛生管理のしやすさ」を最優先で選ぶ
- 漂白剤や熱湯消毒、食洗機に対応した素材が望ましい
- プラスチック製は安価で手入れが楽だが傷がつきやすい
- 木製は刃当たりが良いが水分を吸いやすくカビに注意が必要
- ゴム製(エラストマー)は刃当たりと衛生面を両立する選択肢
- 肉用は色を変えると視覚的に使い分けやすい
- 使用後は「水」で洗い流してから「洗剤」で洗う
- 洗浄後に熱湯や漂白剤で消毒し、しっかり乾燥させることが重要
 
  
  
  
  
